君の隣
帰りの電車の中、理名は拓実の肩に頭を預けていた。

「……あっという間だったね」

「うん。

 でも、すごく濃かった」

「ふふ……濃かったね、いろいろと」

頬を染めながら、理名が囁く。

「ねえ、拓実」

「ん?」

「……あなたとこうして、夫婦でいること。

 何気ない時間を重ねていけるのが、幸せだなって。

 改めて思ったの」

拓実は、彼女の手をそっと握った。

「俺も。

 同じこと、ずっと思ってた」

車窓の外には、夏の終わりの景色が流れていた。

 どこまでも続く線路の向こうに、ふたりの未来が確かに続いている気がした。


「……ただいま」

「ただいま、理名」

ふたりの声が重なる玄関。

 旅の荷をほどく前に、拓実が背後からそっと理名を抱きしめる。

「……やっぱり、家の匂いだね」

「でも、ちょっと名残惜しい。
 温泉、気持ちよかったな」

「また行こう。

 すぐじゃなくても、仕事が落ち着いたら」

理名が、少しだけ後ろ手に拓実の手をぎゅっと握る。

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