君の隣
夜が明けても、理名の意識は戻らなかった。

 ただ、数値は少しずつ安定し始めていた。

 一時的な昏睡状態──

 それが彼女の脳を守るために必要な過程だった。

 軽くドアがノックされた。

 顔を出したのは、指導医だったこともある麻未だった。

 麻未の、線の細い華奢な身体。

緊急対応を終えて、如実に疲れを背負っていた。

 丸い目の下には、くっきりとクマが出来ていたのが、何よりの証だった。
 

「桐原先生。

 いいかげん、少し休みませんか?

 桐原先生まで、倒れちゃいますよ」

「……大丈夫。

 離れたくないんだ。

 ……ありがとうございます。
 心配してくれて。

 岡崎先生こそ、少し仮眠取ったらどうですか?

 栗沢先生が心配して、今にも飛んできそうですよ」

そう答える拓実に、麻未はふっと苦笑した。

「……彼女、絶対戻ってきますよ。

 だって、ちゃんと呼ばれたから──あなたの声で」

その言葉に、拓実の喉が詰まりそうになる。

(俺の声、届いてたのか……?)


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