君の隣

後悔

それから、2日後。

 理名の鎮静が解かれ始め、意識レベルがわずかに回復していく。

「理名……聞こえるか?」

ベッドのそばで手を握る拓実に、
ほんのわずかだが──まぶたが、ぴくりと動いた。

「……っ、理名」

声が震えた。

 それでも彼女は、ゆっくりと目を開けた。

天井の光がまぶしそうに瞬きをする。

 焦点が定まらないその視線が、ようやく、拓実を捉える。

「……たく、み……?」

そのかすれた声に、拓実の目から大粒の涙がこぼれた。

「おかえり……理名。

 本当に……よく、戻ってきてくれた……」

言葉の最後は、嗚咽になって崩れた。

拓実は、ベッドの脇に膝をつき、彼女の手を額にあてた。

 理名は、虚ろな目でその涙を見つめ、ゆっくりと瞬きをした。

「……ごめん、なさい……」

そう呟く彼女の手を、拓実はぎゅっと握り返した。

「謝るな。

 もう何も一人で背負わなくていい。


 これからは、全部──一緒に、乗り越えよう」

その声には、迷いも、戸惑いもなかった。

 緊迫の夜から、安堵の朝へ。

 拓実は涙を拭いながら、初めて心から理名を抱きしめることを許された気がした。
 
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