君の隣
その夜。

 学会後の懇親会も終わり、ホテルのロビーに戻った頃には、もう夜の21時を過ぎていた。

 エレベーターに乗った朱音。

 同じエレベーターに、高沢が乗ってきた。


「……お疲れさま。

 堂々としてたな」

「来てたんだ……」

「君の登壇があるって知って。

 迷ったけど……結局、申し込んだ」

「……どうして?」

「……優秀な君なら、言わなくても分かると思ってね。

……俺と、一緒になる覚悟があるなら、部屋に来て?

 俺の部屋、朱音先生のすぐ下の、202号室だから」

その響きには逃げもごまかしもなかった。

 朱音の心臓が、高鳴る。

答えは、もう決まっていた。
 
 
ホテルの高層階、ツインルームの一室。

 部屋のドアを開けると、熱を孕んだ空気が二人を包んだ。

 高沢の瞳は深く、静かに燃えている。

「いいんだな?」

 低く掠れた声で問いかける彼に、朱音は強く頷いた。

「……私、もう、誤魔化せない。

 ずっと……あなたに触れてほしかった」

その声に、高沢の喉がゆっくり動いた。

「朱音……」

名を呼ばれるだけで、身体が熱を持つ。

 この部屋に立ち入ることそれ自体に、どれほどの意味があるのか──
 
朱音は誰より、知っている。

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