君の隣
夜が来るたびに、理名は悪夢に怯えた。

 目を閉じると、あの暗い底へ引きずり込まれるようで、何度も肩を震わせた。

けれど、そのたびに拓実はそばにいた。

 「大丈夫、ここは病室だ。

 俺もいる。

 ほら、手……握ってる」

 そう囁いて、理名の冷えた指にぬくもりを重ねた。

日が過ぎるごとに、理名の表情に少しずつ変化が現れる。

 眉間の皺が和らぎ、涙に濡れていたまつげが乾いていく。

 そして、ある朝──

 拓実に向けて、小さな笑みを浮かべた。

「……おはよう」

その声に、涙があふれた。

かすかな朝の光が、二人の手を照らしていた。

 生きていてくれて、ありがとう。

そう言葉にする前に、全てが伝わっていた。


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