君の隣

叱咤と、激励

その足で、拓実は産婦人科医局の扉を叩いた。

「……朱音先生。

 少しだけ、お時間をいただけますか。

休憩中でしたら、すみません」

淡いイエローのブラウスに、ベージュのスカート。

 普段、オペ中は結っている黒髪は、解かれている。

 白衣は脱いでいて、休憩中だということを暗に示していた。

 朱音は、拓実を見るなり察したように、やわらかくうなずいた。

「……理名ちゃんのことね」

朱音先生の隣の椅子に腰を下ろすと、拓実は堰を切ったように語り出した。

「彼女が、不妊治療をしていたなんて、知らなかった。

 何も言ってくれなかった。

 ……俺は、恋人なのに、医師でもあるのに、それすら気づけなくて……」

拳を握りしめたまま、拓実は俯いた。

 その姿に、朱音はしばし黙っていた。

 
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