君の隣
やがて、静かに、しかし言葉を選ばずに言い放った。

「……それは、あなたが“理名ちゃんにとっての安全な場所”になれていなかったからよ」

「……え?」

拓実は顔を上げた。


朱音の目は静かで、それでいてひどく真っ直ぐだった。

「彼女はね、あなたを頼りたかった。

 だけど、頼った時に“自分の存在があなたの負担になってしまう”と、どこかで感じていた。

 あなたが“傷つく”ことを、彼女は誰よりも恐れていたの。

 だから、言えなかったのよ」

「でも、俺は……」

「違うわ。

 言わせられなかったのよ、あなたが」

その言葉は、鋭く突き刺さる刃だった。

朱音は言葉を選ぶようにしながら、静かに告げた。

「──あなたはね、優しさで全部を包もうとする。

 でもね、そうやって“何も聞かない優しさ”は、ときに残酷なの。

 そして、理名ちゃんがこうして黙っていることをあなたが『受け入れてしまった』。

 それもまた、彼女が本音を言えなかった理由のひとつよ」

拓実の表情がわずかに揺れる。

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