君の隣

沈黙の中で、拓実の手が震えていた。

「……俺、怖かったんです。
 理名を支えたいって思えば思うほど……

 その想い自体が、逆に彼女を追い詰めるんじゃないかって。
 
……それが何より、怖かった」

朱音は初めて、その言葉にふっと口元を緩めた。
 
そして、ひととき、目を伏せた。

「怖いって思うのも、不安になるのも。

それが、人間としての正しい感情よ。

 人はそんなに完璧じゃないもの」

朱音は、ゆっくりと息を吐いた。

そして、静かに語り始める。


 「……昔、私もね、誰かの隣にいながら、言えなかったことがあったの。

 その人は、私を守ろうとしてくれていた。

 でも、私が弱さを見せたら、その人が壊れてしまう気がして……怖かったの」

 拓実は、朱音の言葉に目を見開いた。

 
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