君の隣
 ……自分の目の前で理名が幾度となく見せた、“平気なふり”。

「彼女が欲しいのは、正論じゃない。

 “あなたがどんな状態でも、俺はここにいる”っていう覚悟なの。

 目の前の理名ちゃんの現実から逃げずに、一緒に傷つけるくらいの覚悟よ。

 優しさだけじゃ、彼女の痛みは超えられない。


 「……あなたが、彼女の“安全な場所”になれるかどうかは、これからのあなた次第よ。

……頑張りなさい」

 朱音の声には、揺るぎない強さがあった。


その言葉に、拓実は、静かに、深くうなずいた。

「……彼女を、守りたい。

 ちゃんと、全部受け止めたい。

 これからは逃げずに、向き合っていきます」

朱音は、その瞳を見て、目を細めて優しく頷いた。

「それなら、もう迷わなくていいわ。

 彼女が一歩を踏み出す時、他の誰でもない、あなたが隣にいてあげて」


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