君の隣
理名は、驚いたように息を呑んだ。

 目を見開いたまま、しばらく言葉が出ない。

「……ほんとに、いいの?」

「俺は、理名の全部を知って、一緒に生きていきたいと思った。

 悲しいことも、嬉しいことも。

 これから、きっとたくさんある。

 その全部を、理名と一緒に乗り越えたい」

理名は泣きながら、何度も頷いた。

「……私も、拓実と生きていきたい。

 子どもができても、できなくても……

 それでも、あなたとならきっと幸せになれる」
 

手を伸ばし、拓実の胸に顔をうずめる。

「ありがとう……

 こんな私を、好きでいてくれて」

「好きになったのは、理名だからだよ。

 弱さも、強がりも、全部、愛してる」

そっと、ふたりの唇が重なった。


ふたりの距離は、もうすれ違っていなかった。


 確かに、同じ未来を見据えていた。

そしてそっと、拓実は理名を抱きしめた。

それは、すれ違いの先にたどり着いた――真実の「家族」への第一歩だった。
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