君の隣
電話を切り、騒がしい宴会場を離れられる安堵感が胸を満たした。

飲み会のような賑やかな場は、昔から苦手だった。

 今でも好きになれない。

「急に患者の処置が必要になってしまって。

盛り上がっているのに、途中で抜けちゃうけど、ごめんね。

これ以上ここにはいられないの」

事情を説明する。

「そっか、仕方ないね」

「よっ、岩崎医師!

 かっこいい!」

「頑張って!」

意外にも皆は快く送り出してくれた。

 その光景に理名は胸を撫で下ろし、居酒屋を出た。

すると、ピンストライプのスーツを着た男性が店から出てくるのが見えた。高校時代の同級生、桜木圭吾(さくらぎ けいご)だ。

高校2年のとき、同じクラスになったことが一度だけある。

 彼は理名に気がある様子だった。

 当時、理名にはすでに好きな人がいたため断っていた。

本気だったらしく、その後も何度も理名の親友たちにリサーチをかけていた。

その後、社会人になってから、当時の高校教師だった三上 夏南(みかみ かな)と再会し、恋人関係のようだ。

 
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