君の隣
「……なんでこんなに、慎也の匂いだけで泣きそうになるんだろ」

「泣いていいよ。

ずっと頑張ってたの、わかってるから」

そのまま、リビングへ。

 彼女を抱いたままソファに腰を下ろし、膝の上に乗せる。

麻未はくすぐったそうに身を捩らせながら──
慎也の首に腕を回して、顔を寄せた。

「……ねえ、帰ってきたよ、って……
身体でも、伝えていい?」

「……俺も、そうしたかった。
 誰かさんが、おあずけくらわせるから」

口づけは、ゆっくりと始まった。

 唇が触れるたびに、心の隙間がひとつずつ満たされていく。

夜明けの光が差し込むリビング。

カーテンの隙間から零れる薄明の中で、

ふたりは互いを確かめ合うように、丁寧に、甘く、重なり合った。

時間は、止まったようだった。

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