君の隣
普段の病棟の景色や、日々の家事など忘れられる。
「……この浴衣、似合ってる?」
頬を染めながら、麻未がそっと慎也を見上げた。
淡い水色の浴衣。
首元が少し開いて、鎖骨がちらりと覗いている。
「うん。
……綺麗すぎて、困る」
慎也の声は、いつもよりも低く、甘さを含んでいた。
部屋に敷かれた布団。
もう夕食を終えたふたりは、しっとりとした夜の空気に包まれていた。
麻未がゆっくりと、慎也に身を寄せる。
「──ずっと、こうしていられたらいいのに」
麻未がぽつりとこぼしたその言葉に、慎也は深く頷いた。
「いられるよ。
何年先も、何十年先も。
俺たちなら」
「……そのときは、赤ちゃんも隣にいたりして」
彼の胸にすっぽりと抱かれて、ようやく吐き出せたその一言は──
まるで魔法の呪文だった。
「……じゃあ、今夜は、その未来に近づこうか」