君の隣
慎也の指が、そっと麻未の頬に触れる。

そして浴衣の合わせ目に、ふわりとすべり込んだ。

「んっ……
 し、慎也……」

肌に触れる指先の温度が、優しいのに熱い。

 胸元をなぞるように、ゆっくりと浴衣が開かれていく。

くちづけは、最初は甘くて、やさしくて。

けれどすぐに、ふたりの間にある熱が追いついて──
舌がふれ合い、吐息が混じり合う。

慎也の手が、麻未の肩をそっと落とし、浴衣が滑るように脱げていく。

白い肌があらわになるたびに、彼の目が深くなる。

 唇が、首筋から胸元へ──

 そっと、撫でるように。

 確かに愛おしく。

「……慎也、そんなとこ……

 っ、ん……」

慎也は麻未の身体を、指先と舌で丁寧にに愛した。

 やわらかな胸を包みこむ手のひら。

 やさしく、時に焦らすように、中心を指先でなぞる。

麻未の声が、甘く、濡れて、震えて。

 普段見せないその姿に、慎也の呼吸も乱れていく。

「麻未……

 全部、気持ちいい?」

「……きもちいい、こわいくらい……

 こんなの、はじめて……」

脚を絡めて、彼女はすべてをあずけた。

ふたりの熱が、ひとつに溶け合っていく。

何度も重なって、深く、深く──

 奥まで、満たされて。

「……し、慎也……

 も、もう……っ」

「大丈夫、ちゃんと見てる。

 全部、俺の麻未だから……」

何度も名前を呼ばれて、

 麻未は泣きそうな顔で、でもとびきり幸せそうに笑った。

──夜明け前まで、ふたりは何度も何度も、
抱き合って、触れ合って、愛し合った。

普段は強がりな彼女の、
本当の素顔を知っているのは──
慎也だけだった。

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