君の隣
そのとき、背後から、慎也のぬくもりが寄り添ってきた。

 角張った腕が背中からまわり、そっと彼女を包み込む。

「……麻未」

低く、落ち着いたその声が、耳元をくすぐる。

 でも、それだけではまだ不安が消えてくれない。

「もし、私の中に赤ちゃんがいたとして……

 この腕で、ちゃんと抱きしめてあげられるかな。

 泣いてるときに、ちゃんと安心させてあげられるかな。

 怖がらせたり、傷つけたり、してしまわないかな……」

言いながら、自分でもわかっていた。

 “まだ起きてもいないこと”にこんなにも怯えていることが、情けないとも思った。

 でも──それでも、怖かった。

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