君の隣
「……私が10歳の頃に、亡くなった両親。
 交通事故で突然、だったから。

  “ただいま”って言って迎えてもらったことがあった。

そんな気がするけど、おぼえてないの」

 記憶にあるのは、祖母の冷たい声と、麻未を人と思わないような、蔑みの目だった。

言葉にした瞬間、涙がこぼれた。

 声が、嗚咽に変わる前に、慎也が強く、麻未を抱きしめた。

「──俺がいるよ、麻未」

その言葉が、体の奥にしみこんでくる。

 穏やかで、でも揺るがない声。

「君が知らないことは、俺が一緒に覚えていこう。

  君が不安なときは、俺が横にいるから。

 抱きしめて、名前を呼んで、何度でも伝えるよ。
 大丈夫だって──

 君は愛せるって、ちゃんと届くまで」

麻未は、ぐっと唇を噛んだ。

 
< 58 / 216 >

この作品をシェア

pagetop