君の隣
張りつめていた心が、ようやく、ほどけていく。

でもそのかわりに、胸の奥から、何かが溢れた。

 あたたかくて、痛いようで、でもやさしい──

 麻未の瞳から、ひとつ、またひとつ。

 温かい雫がこぼれた。

「……慎也、私ね……

 怖くても、逃げたくないって、思ってるの。

 いつか、あの頃の私を越えたい。

 ひとりじゃないって、信じてみたい」

慎也の腕が、さらに強くなった。

「信じていいよ。

 俺がいる。

 君が過去にどんな痛みを背負ってきたとしても、
 これからの未来は、君の手で変えられる」

しばらくのあいだ、ふたりは何も言わずに、ただ抱き合った。


 
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