君の隣
「そりゃよかった。
俺は君の全部を好きになるために、隣にいるから」
そんな言葉を笑って言える彼が、たまらなく愛おしいと思った。
「──慎也」
「ん?」
「もう少しだけ、ぎゅってしてて。
あったかいの、なくなっちゃいそうで……」
「……なくならないよ。
ずっと、ここにある。
君が眠っても、朝が来ても──
ずっと、抱きしめてる」
そう言って、彼はふたりの体に毛布をふわりとかけ、もう一度、抱きしめ直した。
心と心のあいだに言葉はいらなかった。
静かな夜が、ふたりの鼓動を、そっと包んでくれていた。
朝の光は、少しだけ霞んでいたけれど、涼しげな風がカーテンを揺らしていた。