君の隣
麻未が目を覚ましたとき、隣には慎也の寝顔。

 穏やかに呼吸をしているその姿に、つい頬がゆるむ。

(……ありがとう。

 私、ちょっとだけ、軽くなったかもしれない)

そのままそっと身を起こし、髪を整えようとしたとき──

 「……起きたの?」


 低くかすれた声が背中から届いた。

「うん。

 そろそろ、支度しようかなって」

「そっか……」

 慎也も身を起こし、背後から軽く麻未の肩を抱いた。


 「大丈夫そう?」

「うん。

 たぶん、大丈夫。

 ……でも、不安になったら、また頼ってもいい?」

「当たり前でしょ。

 俺はいつだって、味方だから」

そう言って、額にキスをひとつ落とされた。

 それだけで、朝の空気がやさしくなった気がする。

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