君の隣
車に乗って、病院へと向かう道。

 まだ通勤ラッシュには早い時間帯。

 どこか落ち着いた空気のなか、ラジオから静かな音楽が流れている。

「今日も、子どもたちの元気な声、聞けるかな」

ふいに、麻未がぽつりとつぶやいた。

「きっと聞けるよ。

 で、君も笑ってる。

 いつもみたいに」

「……ふふ。

 だったら、いいな」

信号が青に変わり、車はゆっくりと進み出す。

ふたりのあいだに流れる時間は、穏やかで、優しい──

 未来へ続く道を、少しずつ、一緒に歩き出しているのを感じさせてくれる朝だった。

 慎也の運転する車に揺られながら、麻未は静かに窓の外を見つめていた。

旅行から戻って数週間。

慎也は以前よりさらに過保護になった。

 麻未もまた、朝の支度中やベッドに入る前の沈黙に、小さな幸福を感じるようになっていた。


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