君の隣
そのあと、同僚たちには個別に伝えることにした。

 そして最後に、理名の席へ。

彼女はちょうど、レセプトの入力をしていた。

 麻未は、意を決して声を掛けた。

「……ちょっと、いいかな。
 席、外せる?」

「あ、はい。

 大丈夫です」


ふたりで病院の屋上へ移動したあと、麻未はしばらく言葉を探した。

 理名が不思議そうに待つその視線を、正面から受け止める。

「……妊娠したの」

静かに、でもはっきりと言った。


「……そうですか。

 おめでとうございます」

その“おめでとう”の声音は、震えていた。

そのひとことを口にするまでに、隠せない悲痛な痛みを堪えていることも、麻未は分かっていた。

これ以上、何も言うべきではない。

 そう思った麻未は、静かに屋上から出て行った。

 
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