君の隣
朱音との検診を終えた夜。

 窓の外では、静かに雨が降っていた。
 
しとしとと静かに、窓を濡らす優しい雨音。

 麻未は、キッチンに立つのをやめて、ソファに横になっていた。

朝からひどい吐き気が続き、昼食もまともに摂れずにいた。

 午後の外来を後輩に交代してもらった。

 「いいんですよ、先生。

 いまはご自分の体を大切にしてください」

 そう言ってくれる同僚やスタッフの笑顔。

 ありがたいはずなのに。

 胸が、ズキンと痛んだ。

 いいのかな、これで。

──私は、何もできてないのに。

「……ねぇ、慎也」

シャワーから上がったばかりの慎也が、ソファの脇に膝をついた。

「どうした?」

濡れた髪から滴る水が、彼の額をすべって落ちる。

 バスタオルを肩にかけたままの彼は、少し心配そうな目で彼女を覗き込んでいた。

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