君の隣
その夜、風がやわらかく吹いていた。

ベッドに横になった麻未は、仰向けのままお腹にそっと手を添えた。

 部屋には、思い切り暖房をきかせてある。

 張りと重みのある丸みが、呼吸のたびに、わずかに上下する。

──予定日まで、あと2週間。

病院からは「もういつ生まれてもいい状態」と言われている。

 すでに入院の準備も整え、毎晩、出産用バッグが目につく場所に置かれていた。

(なのに──)

「……怖いなぁ」

ぽつんと漏れた声が、夜の静けさに吸い込まれていく。

隣で眠っていた慎也が、ゆっくりと目を開けた。

 小さな声にも、すぐに気づいてくれるのが、彼だった。

「……麻未?」

「ごめん、起こしちゃった?」

「ううん、大丈夫。

 ……張ってる?」

「違うの。

 そういうんじゃなくて……」

ふいに、涙がこぼれた。
< 89 / 216 >

この作品をシェア

pagetop