君の隣
「……慎也」

「ん?」

「なんか、こういうの、贅沢だね。

 ベッドの上でごはん食べるなんて」

「産休初日の特権です。

 明日からはダイニングで」

「えぇー!

 明日も続いてくれていいのに」

「交渉次第で考えます」

笑いながら顔を見合わせて──
ふたりの額が、そっと触れ合った。

何も特別なことはない、ふたりきりの朝。

でもその静けさの中に、麻未は確かに感じていた。

“もう一人”が、そこにいること。

「ねえ……がんばるから。

 しっかり、休んで、ちゃんと迎えられるようにするから」

お腹にそっとささやく彼女の声に、慎也は優しく頷いた。

「……大丈夫。きみは、ちゃんと“母になっていく”よ」

そう言って、彼はそっと、麻未のお腹に口づけを落とした。

やさしい、産休初日。

 その静かな幕開けに──

ふたりは、ただ、ぬくもりを分かち合っていた。



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