恋がしたい。ただ恋がしたい。

「だって、亨さんの事心配だったから…。」


望と呼ばれたその女性は大きな瞳から涙をポロポロ溢しながら訴えた。


「どうして亨さんは、この人じゃないと駄目なんですか?この人…亨さんの事、全然愛してないじゃないですか!」


「プロポーズを見ても関係無いって顔してさっさと帰って、連絡もして来ない…どれだけ亨さんが苦しんだか分かってますか?」



あぁ…この人、亨が花束を渡してた人かもしれないなぁ…。


とっとと忘れてしまおうと、頭の隅に葬ったあの日の記憶をぼんやりと思い返す。


彼女は涙を流しながらも、こちらに敵意の視線を向けてきていて、その器用さに感心すら覚えてしまう。


彼女のテンションがどんどん高まって行くのに比例して、こっちのテンションはかなりの勢いで下がって来ている。


大体、勝手にあなた(?)にプロポーズしたのは亨でしょ。


人を試した挙げ句、思い通りにいかなくて落ち込んだとか、訳が分かんない。


亨とは長い付き合いだったから、時間をかけて別れるよりも私がすっぱりと諦められる方法を取ってくれたんだって、そう思ってた。


気が強い…?


全然そんな事無い。いつも言いたい事が言えなくって損してばっかりだ。


不満は言わない…?


言ったらそれ以上にネチネチ言われて面倒だから黙ってしまうだけでしょう?
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