恋がしたい。ただ恋がしたい。

「純くんから連絡もらったの。『崎山が具合悪くて早退したから、様子見に行ってやってくれないか?』『月曜日だからお前休みだろ?』って。」


「でもね、今日は研修で休みじゃなかったのよね。ほら、私、金曜日に奈緒子ちゃんとランチしたじゃない?あれって今日の研修の振替休日だったのよね。まぁ、研修って言っても社内研修だから電話はできるけど、何回かかけたのに香織ったら全然出ないし。……死んでるんじゃないかと思って気が気じゃなかったわ。」


スマホを見ると、確かに着信を知らせるランプがチカチカしている。時間は18時をちょうど回った所だった。


「ごめん。薬が効いてたみたい…全然気がつかなかった。」


連絡がつかないから、こうして様子を見に来てくれたんだろう。


心配させて、さらに迷惑までかけてしまっている事実に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


ガクッと項垂れた私に紫がクスクスと笑いながら頭を撫でてきた。


「よしよし。そんなシュンとしなくても大丈夫だって。香織お腹空いてない?何か食べた?」


まるで犬か何かのように慰められながら、「ほら、まずコレ飲んじゃいなさい」と促されるままペットボトルの中身をゴクリ、と飲み干した。


ちょっとだけ甘ったるい独特の味わいが、乾いた喉と心を優しく潤していく。


「…帰って来てすぐ、お昼くらいにお粥食べた。」


「それって、ひょっとして裕介が作ったの?」


うん、と頷くと紫は私の目をじーっとのぞきこんだ。
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