恋がしたい。ただ恋がしたい。
「実は…さ、さっき裕介からも電話が来てたのよ。香織が日曜日から具合が悪くて、今日もちゃんと食べてるか、帰って来たか、倒れてないか心配で連絡したんだけど電話に出ない。様子見に行ける?って。」
「あんたが行けばいいじゃないって言ったんだけど、どうしても仕事が抜けられないとか、何とか言っちゃってさー。」
そう言われて初めて着信の画面を開く。そこには紫だけじゃなくて、裕介くんからの着信も何件も入っていた。
昨日あんな風に避けてしまって…絶対に避けていた事だって裕介くんは分かっているはずなのに、それでも電話をくれるなんて…
彼女に対して醜いくらいの嫉妬をして、同情なんていらないって思っていたのに、こうして裕介くんの優しさを感じると…やっぱり嬉しくなってしまう。
「…あんた達、何かあったでしょ?」
「………。」
着信履歴を見ながら思わず緩んでしまった表情を、紫は見逃さなかった。
たぶん……紫には私の気持ちなんて私が自覚する前から、とっくに知られちゃってるんだと思う。
裕介くんには逃げないでちゃんと気持ちを伝えようとは思っているんだけど…ばれているとは言え、紫に話すのは少しだけ恥ずかしさが先に立ってしまう。
「さっきの電話の事だけどさ、何だか裕介のヤツ煮え切らない態度だったのよね…それに、今までだったら仕事だろうが何だろうが、香織に何かあったら絶対帰って来てると思うしね。」
そう言うと、紫はそっと私の頬に触れた。
「香織…泣いたんでしょ。…何があったのか、話して?」
いつも紫は厳しいだけじゃなくって、こうして私が辛い時や悲しい時必ず側にいてくれる。
そういう所は安心できるし、私はそんな紫の優しさにずっと頼って甘えて来た。
だけど、そろそろ紫に頼りっぱなしな自分は卒業しなきゃ。