恋がしたい。ただ恋がしたい。

「何よ、香織が素直なんて気持ち悪いわね。」


紫はニヤニヤと笑ってはいるけど、頬は少しだけ赤く染まって、照れているのを誤魔化しているのが分かってしまった。


……紫って、ストレートに気持ちをぶつけられるのに弱い人なのかも。


10年以上の付き合いだって、友達だって、性格を全て把握してる訳じゃ無くてこうしてぶつかってみないと分からない気持ちもあるんだよね。


紫と友達で良かった。三年前も、そして今も。



「…そう言えばこのマンションってさ、香織以外の人って入れた事が無いんだよ。知ってた…?」


紫がまだ赤い頬をさっと隠し、ローテーブルに置かれた鍋を「温めてくる!」と抱えてキッチンへ向かう途中、思い出したように聞いてきた。


「……えっ?」


まさか、そんな事あるはず無いじゃない。私なんてここに暮らす前は、何回って数えきれないくらい遊びに来てたのに…。


奈緒子ちゃんは…?


それに、純くんや小山くんだって二人と友達だから、ここに来てたっておかしくないはずなのに…


「だって…昼に純くんに送ってもらったけど、説明しなくても場所分かってたよ?遊びに来てたんじゃないの?」


「ううん。奈緒子ちゃんと飲みに行った時に、ここまで送ってくれた事もあったから場所くらいは分かるんでしょ。」


二人とも社交的で友達だってたくさんいるのに。私以外の人が入ってないなんて…あり得ないでしょ。


…でも、ここに引っ越して来る時、二人とも誰も来た事は無いから安心してって…確かにそう言っていた。
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