恋がしたい。ただ恋がしたい。

「裕介くん。頬っぺた…大丈夫?」


相当痛かったはずだ。裕介くんの左頬は手形こそ付いていないが、うっすらと赤くなっている。


「すぐに冷やさなきゃ。」


立ち上がろうとした肩をそのままぐっと押し留められた。


「僕は大丈夫。…ねぇ、香織ちゃんのほうこそ、ほんとに大丈夫なの?」


間近にいるのに微妙に視線を逸らしたまま、裕介くんが話かけてきた。


その態度にまた少しだけ胸が軋んだけど、気がつかないふりをして返事をした。


「…うん、もう大丈夫。電話も気がつかなくて…心配かけてごめんね。ずいぶん慌ててたけど、裕介くんは紫に何て言われたの?」


「…香織ちゃ…『香織が、ヤバい』って。それだけLINEが入ってたんだ。どういう事?って聞いても既読も付かないし、紫ちゃんに電話かけても電源切られてるし。不安で心配で、急いで帰って来たら香織ちゃんの車が無いから、病院にでも担ぎ込まれたのかと思って、ほんと焦った。」


…紫があんなにスマホをちょこちょこいじってたのは、裕介くんにLINEしてたんだ…。レシピ検索じゃなかったんだね…。



「……ごめん。また…迷惑かけちゃったね。」


裕介くんも紫も、私が困ったり弱ったり落ち込んでる時には必ず側にいてくれる。だけど私は二人に迷惑をかけてばっかりだ。


こんな卑屈で弱い自分は大嫌いなのに、見た目ばっかり強がってみんなの求める自分になりたいって願っている。


…ほんとうは、ただ一人の好きな人から求められれば……それだけで満たされるはずなのに。

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