恋がしたい。ただ恋がしたい。

「…具合が悪かったのって、裕介くんが有紗さんと付き合ってるって思ってショックで、ご飯が喉を通らなかったからなの。……だから、裕介くんと紫のおかげで体調はすっかり良くなったから、もう大丈夫…って言ったら…裕介くんは、どうする?」


恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのを自覚しながらも、『止めなくていいよ』『私も、あなたが欲しいから』と思いきって伝える。


裕介くんは一瞬目を見張った後で、満足気に微笑んだ。


その笑顔はいつも接客で見せている王子様のような、キラキラとしたキラースマイルではなく、艶めいた色気を感じさせる微笑みだった。


「…じゃあ、遠慮なくって事で……いいんだね?」


その色気のある唇に、声に、眼差しに、心臓がドクンと音を立てる。


操られるように頷くと、裕介くんは私に向かって手を差し出した。


「…おいでよ。」



その長い指先にゆっくりと自分の指先を乗せると、キュッと優しく手を握られる。


柔らかに心ごと絡め取られるような感覚に、また鼓動が一際高まった。


***


ずっと恋がしたいって思ってた。ただ、恋がしたいって。


初恋を失ってから、誰かを好きになっていても『これは恋じゃない』なんて頑なに言い張っていた私を、裕介くんはずっと優しく見守ってくれていた。


ありがとう。私に恋をしてくれて。


ありがとう。大切な想いを伝えてくれて。
< 206 / 270 >

この作品をシェア

pagetop