恋がしたい。ただ恋がしたい。

そこまで言うと、また小山はくくっと笑い出した。


「別に殴るような事は何もないわよ。それにね、この前だって、陰に隠れて話を聞いてたのが香織にバレるのがカッコ悪いからって何もしないようなヘタレな弟だったら、それこそ顔の形が変わるくらいにボコボコに殴ってたわよ。」


「ぎりぎりまで出るかどうか迷ってたんだから、十分ヘタレだろ。」


…今頃、裕介くんはくしゃみが止まらなくなってるかもしれないなー。


似た者同士のテンポの良い二人のやり取りを聞きながら、ぼんやりとこの場にいない裕介くんの顔を思い浮かべたら、少しだけ頬が緩んでしまった。


今裕介くんは、来月の新店舗のオープンに向けて、休みも無いくらいに忙しく働いている。


「何ニヤニヤしてるのよ、香織ったら…。ほんと、二人とも似た者同士って言うか…じれったいったらなかったわ。ライバルがいても負けないとか、何が何でも手に入れてみせる!ってならない所が特にね。」


むぎゅっと緩んだ頬をつままれて呆れられたけど、仕方ないと思う。


意地っ張りだけど気が弱くて、他人の為なら動けるくせに、自分の事は二の次で…


恋に臆病なのが、私、崎山香織なんだから。

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