恋がしたい。ただ恋がしたい。
小山は私の話をバカにする事もなく、真剣な表情で聞いていた。
ちら、ちら、と周りの席の視線がカウンターに集まっている。営業スマイル以外の表情なんてなかなか見られないから、小山ファンには眼福ものなのかもしれない。
ややあって、小山が口を開いた。
「崎山とは高校の時にずっと一緒にキャプテンとして頑張ってきただろ?だから、普段は強気なくせに自分が部を纏められるのかって悩んでた事も知ってるし、気が弱いなりにしっかりしようとしてたのも分かってた。」
「だから、俺が本気で怒ったらもう純には関わらないだろうって、自分の気持ちよりも奈緒や純の気持ちを考えるような優しいヤツだからって分かってて、わざとああしたんだ。本当はあの時に純が崎山や奈緒に自分の気持ちをはっきりと言えたら良かったんだけど、あいつも優しくて…ちょっとだけずるいヤツだからな。」
「俺がした事は、ほんとにただの自己満足でお節介。崎山が納得いかないのも当然だよ。それでも、崎山は俺に感謝するのか?……ほんと、お人好しで、奇特なヤツだな。」
ニヤリと笑った小山に、同じように「私の暴走を止めてくれた所だけは、感謝しておくわ。」と言ってニヤリと笑い返すと、私はいつもと同じように目の前のフォンダンショコラに集中する事にした。
やっぱり……小山はただの同級生で友達の友達だ。私達が友達になる事は一生無いと思う。
顔はいいけど顔の良さだけでカバー出来ないほど口が悪いし、憎ったらしいし、なまじ顔が整っているから何考えてるか全然分かんないし。腹の中は、まーーーーっ黒だし。
だけど、小山が作るケーキ(だけ)は大好きだ。
だから、これからも常連客として『Milkyway』には通ってあげようと思う。