恋がしたい。ただ恋がしたい。

ちなみに亨に持って行かれた、私の大切な大切な宝物の『crown』のアルバム一式は、最近志田ちゃん経由で無事に私の手元に戻って来た。


……望さんからの手紙付きで。


「崎ちゃん先生、手紙は見たくなかったらそのまま捨てて下さいって望が言ってました。確かに伝えましたからね。後は煮るなり、焼くなり、ご自由に。」


そこまで言われて、はい、じゃあそうしますね、とその場で破り捨てる訳にもいかず、一応持ち帰ってちゃんと目を通した。


女性である事を最大限にアピールしていた彼女のイメージとは違って、ごちゃごちゃした装飾なんかは一切無いシンプルなパステルイエローの便箋に、これまた彼女のイメージではない達筆な文字で書かれたその手紙の内容は、ちょっとだけ意外なものだった。


まず手紙の始めで『Milkyway』で私や周りの人、店の人に迷惑をかけてしまった事をひたすら謝る文章がかかれていた。


それから亨を好きになってしまい、私という彼女がいる事を知っても諦めきれなかった事、嫉妬にかられて私の部屋にまで押し掛けてしまった事も謝罪していた。


『crown』のアルバムを持ち出したのは、プロポーズを見てもまだ二人の関係に無関心だった私に、これが無くなればさすがに連絡して来るだろうと亨が思ったかららしい。
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