恋がしたい。ただ恋がしたい。
「そう言った後に笑った香織ちゃんの笑顔が可愛くて、暫く頭から離れなかった。向いてないと思う事をとことんやってみよう、って思い始めて内向的な性格が変わったのもこの頃からだよ。」
「就職する時も、どうせなら接客業にしようと思ったんだ。で、接客業も色々あるけど、料理も好きだし、努力次第で色々道も開けそうだしって思って『Felitita』に決めた。香織ちゃんは紫ちゃんとずっと仲が良かったし、次に会う機会があったら『崎山先輩』のおかげで今こんな感じで頑張ってますって、そんな報告ができたらいいなって。そしたらまたあの可愛い笑顔を見られるかもしれないって。そう思ったらますます仕事を頑張れたんだ。」
私の手を握りしめたまま、少しだけ遠回りして帰ろうと言った裕介くんにコクンと頷く。9月に入ったとは言え、まだまだ外をのんびり歩いていても汗ばむ時期だ。
マンションに帰ったら、クーラーも効いてるし快適に話せるだろうけど、でも、こんなちょっとだけ不便な時間も悪くはない。
『もう少しだけこうして話していたい。話してもいい?』
そんな裕介くんの気持ちが伝わってくるから。
暑いのに手を繋いで、寄り添って笑顔で話をしている私達は、他の人達から見たら相当バカなカップルに見えるのかもしれないけれど。