恋がしたい。ただ恋がしたい。
志田ちゃんより一つ年下で同僚のこの男は、もちろん羽浦市に一つしかない教育大の出身で、私達の後輩でもある。
見た目だけだと、まだ学生か?って思えるくらいに可愛らしく、目がくりっとして、まるでパピヨン犬のように人懐こい。
「何でって……崎ちゃん先生、酷いっすね。俺も大村家に遊びに来たんですよ。」
そして、学生気分の抜けないこの男は、何度注意しても『でっす、まっす』口調が直らない。
まぁ、今はプライベートだからいいけど、私達が話した言葉をそのまま子ども達が真似して覚えてしまう事もあるんだから、普段から気をつけて欲しいのに。
「あっ!その箱『Milkyway』のですよね。小山さん、元気にしてました?」
『何で小山の事、知ってるの?』と口に出す前に、小山の名前を聞いて、さっきの会話を思い出して真っ赤になった私に木村くんは不思議そうな顔を向けながらも、「どうぞー。」とまるでこの家の住人のように招き入れてくれた。
心臓が胸の中で暴れているみたいに、ドクン、ドクンと激しく脈打っている。
そんな私の葛藤を知らない志田ちゃんは、「お邪魔しまーす!」と嬉しそうに声を上げてさっさとリビングの方へ入って行ってしまった。
「……お邪魔します。」
その慣れた様子に、二人ともここに来るのは初めてでは無いのだと分かった私は、そろそろと二人の後を追ってリビングへと向かった。