恋がしたい。ただ恋がしたい。

「奈緒子さん、お待ちかねの『Milkyway』のケーキが到着しましたよー。」


他人(ひと)の奥さんをさらっと名前で呼ぶ木村くんは、やっぱりこの家の家族みたいだ。


パステルブルーの明るい壁紙に彩られた広いリビングを見渡すと、奥に置かれたベビーベッドの横に佇む彼女を見つけた。


「崎山さん、お久しぶりです。」


あぁ……奈緒子ちゃんだ。


艶のある黒髪。前髪を眉の下で真っ直ぐ切り揃えたショートカット。

色白な肌。口紅なんかいらないくらいに艶のある薄紅色の唇。凛とした瞳。


小柄で華奢な身体。


記憶の中の彼女と目の前の彼女の姿が重なった。


だけど、赤ちゃんをその手に抱いている彼女は三年前と何一つ変わらないように見えるのに、今は立派な母親の顔をしていた。


「……久しぶり。」


それ以上言葉の出ない私に気がつく事無く、同僚二人は赤ちゃんを囲んで盛り上がっていた。


「崎山、ケーキありがとな。」


『Milkyway』のケーキの箱やパンの袋には、お店の名前の通り天の川のようにキラキラとした星の絵が散りばめられている。知っている人が見たら直ぐにそれと分かる、素敵なデザインだ。

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