恋がしたい。ただ恋がしたい。

はい、と純くんにロールケーキの入った箱を渡した。


「……奈子がさ、他の店のケーキだとカロリーが高すぎるって言ってたからさ。奏に頼んだんだけど、崎山が受け取ってくれたんだろ?」


つまり、このロールケーキは小山が奈緒子ちゃんの為だけに作った特別なケーキって事か。


またズキン、と訳もなく痛み出す胸に気がつかないふりをして、震える足に力を入れてベビーベッドの方へと近づいて行った。


「……確か、そらくん、だったよね?」


名前は、内祝いを貰った時に目にしていた。

『蒼空』蒼い空、と書いて『そら』くんだったはずだ。


奈緒子ちゃんは、優しく微笑みながら頷いた。


「抱っこしてみます?」


「……へっ?」


「あー!いいな!俺も抱っこしたい!」


いきなり言われて戸惑っているうちに、木村くんが俺も!と奈緒子ちゃんに向かって手を差し出した。


「木村くんはダメ!……何か、適当だから怖い。」


速攻で断る奈緒子ちゃん。

酷いっすね……と言いながら目に手を当てて、エーン、と大袈裟な泣き真似をする木村くんを見ていたら、少しだけ緊張していた気持ちが解れた。
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