恋がしたい。ただ恋がしたい。
「何だか飲み始めた時から笑ってるくせに泣きそうな目をしてるから、何かあったんだなーって思ってたけど…」
「ほんと、酷いヤツだね。恋愛にはルールなんて無いけどさ。別れるにしても、もっとやりようがあるでしょう?!ほんと、卑怯者。最低だわ。」
「そこまで言わなくても…」
「何言ってんのよ。香織だって菊地に言ってやりたいでしょ!?結局こんなやり方で捨てるくらいだったら最初から付き合うなって。私の3年間を返せよ!って。なのに、言うチャンスすら与えてもらえなかったじゃない。」
とても真面目な顔で話をしている紫さんに水を差すようで悪いけど、突っ込まずにはいられない。
「いや…紫、菊井だから。あと、3年もつきあってな…」
「もー!そんな事どうだっていいの!別れ方が汚いって言ってるの!大勢の前でわざわざ香織の事傷つけるなんて!!」
やっぱり端から見ると、私は相当可愛そうな振られ方をされてしまったらしい。…そして、どうやら分かりやすく落ち込んでしまっていたようだった。
確かに傷ついた。今思い出しても胸がギュッと軋むくらいには。
プロポーズで盛り上がっている空気の中でちら、ちらと確実にこちらに向けられる憐れむような視線。
ひそひそ話。
一緒に盛り上がってもいいのかどうか態度を決めかねている人もいた。
その全てに傷ついて、逃げるように帰って来たのだ。
しかし…またこの話の流れに水を差すようだけど…紫が享の苗字を間違えたままだってのが、かなり気になっている。
訂正したい。私は几帳面なA型なのだ。だけど、既に訂正できる空気ではなかった。