恋がしたい。ただ恋がしたい。
…そうなんだよね。
こうなるまでは浮気なんて疑いもしていなかったけど、最近は付き合い始めた頃の楽しさや愛しさが薄れてきていたのは私だって気がついていた。
だけど付き合いが長くなるとこんな感情になるんだなーとか、もうこれって家族みたいなもんじゃない?なんて思ったりとかして。
それがけっこう穏やかな気持ちだったもんだから、こんな感じでこの人と自然に結婚して一生寄り添っていくんだろうなーとか、そんな呑気なことを考えてしまっていたのだ。
おめでたいにもほどがあるぞ。一週間前までの自分。
「香織はさ、一方的に傷つけられたこんな終わりかたでいいの?菊地に未練があるとか、そんなんじゃなくてさ。納得できるの?」
確かに亨の事は好きだった。だけど、プロポーズを見た瞬間に色々と気がついてしまった事があったのだ。
まず、相当に不誠実な方法だけどこの人は私と本気で別れようとしているのだという事。
目の前にいる『浮気相手』とどれだけの付き合いだったのかとか、私とどんだけ期間がかぶってたかとか…
もしかして私のほうがずーっと『浮気相手』だったのか?とかそんな事は全く関係がなくて……
幸せそうに寄り添う二人の間にはたぶん愛が存在していて、そして私と彼の間にはとっくに愛は無くなっていて…
もう私が出来ることは何も無いのだと、気がついてしまったのだ。
『はい。納得してしまいました』と思いっきり顔に書いてあったのだろう。紫はやれやれ…と大袈裟にため息をついた。