恋がしたい。ただ恋がしたい。

あぁ…だめだ。


心地よさを感じていた心が、醒めていく。



ーーこの体温は、私だけのものじゃない…。



心はゆっくりと事実を認識して、現実に立ち戻っていく。



裕介くんは優しいんだね。



たぶん…



誰にでも。



…私じゃない人にも。



肩に回された指先に手を添えて、ゆっくりと引き離す。


すっ、と身体を離して急に立ち上がった私を、裕介くんは不思議そうに見上げていた。


その表情は、私を抱きしめてくれていた時とは違うものだろうけど、


今はその顔を見なくて済んだ事にほっとしていた。



…振り返らなくて良かった。



「なぐさめてくれてありがとう!わたし、なんだか眠くなってきちゃったから。このまま寝るね。おやすみっ!」


一気にまくし立てるように言うと、言葉を挟む隙も与えないまま、私は自分の部屋へと逃げ込んだ。



裕介くんは何か言いたげにしていたけど、その言葉を聞く勇気までは持っていなかった。



一瞬で納得する所まで思考を持っていって裕介くんから離れる事ができた自分は、わりと冷静だったと思う。



そうだ。裕介くんは寂しい私を慰めてくれただけだ。



そこはしっかりと割り切らなくちゃ。
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