恋がしたい。ただ恋がしたい。
…うん、大丈夫。
裕介くんにとって私は、友達で、ただの同居人。
私たちは、今までお互い必要以上の事には干渉せずに暮らしてきた。
裕介くんに仲良くしている女の子や、たとえ恋人がいたとしても、それは私が気にする事じゃない。
だから…こんな風に心が重くなってもやもやするのはおかしい事なんだ。
まるで心が傷ついてるみたいに。
「ほんと…どうかしてる。」
私はドアにもたれかかったまま、ずるずるとしゃがみこんだ。
なんだか切ないのも、胸が痛いのも、きっと気のせいだ。そうだと思わなくちゃいけないんだ。
心臓がドクドクと脈打ってるのも、たぶん飲み過ぎただけ…
…だけど、
肩に回された手を離す時に触れたしなやかな指先の形と、温かな感触を不意に思い出して、また胸がキュッと音を立てて軋んだ。
信じられない、ありえない、そんな訳ない。
心では自分を納得させるための言い訳を次々と考えながらも、身体だけは正直で、
私は両手で顔を覆ったまま、しばらくドアの前から動くことができなかった。