恋がしたい。ただ恋がしたい。

あれこれ不満はあったけど小山が言った言葉の数々は確実に私の胸に突き刺さり、5年以上経った今でも思い出すだけでじくじくと胸が痛み出す。


そして、あの日から私は、小山の事が苦手な存在になってしまったのだ。




ーー『俺はもう、お前の気持ちに応えてやることはできない。』


5月の連休明け、退院して仕事に復帰したその日に、純くんから初めて私を拒絶する言葉を聞いた。


「『もう応えてやることはできない』って…。純くんは付き合ってた時だって…ううん。出会ってから一度も気持ちに応えてくれた事なんて無かったじゃない。」


純くんの気持ちは、いつでも奈緒子ちゃんに向かっていた。私達が出会うずっと前から、変わらずに。


そんな事は最初から分かっていたのに、私がしつこく初恋を諦められなかっただけだったから。


冗談混じりにだったけど本音を口にできたのは、はっきりと拒絶されるだろうと、なんとなく予想していたからかもしれない。


「すぐに忘れる事なんてできないよ?…それとも、しつこく側にいるって分かったら、またあなたの『幼なじみ』に怒られちゃうのかな…それでもね、私は純くんの事が好きだったし、恋愛感情抜きにして、一緒に働けるのは嬉しかった。『純くん』には振られちゃったけど、『大村先生』には嫌われたくないの。」



そう口にしてから、『好き』と純くんに直接言ったのは初めてだった事に気がついた。



『付き合ってください。』『よりを戻したい。』そう言った記憶はあっても好きだとはっきり口にした事は無かった。


純くんへの想いは大学生の時と同じく、全ての感情が曖昧なまま、突然に終わりを迎えてしまった。
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