恋がしたい。ただ恋がしたい。
***


「…キツイ女だ、なんて言って無かったよ。」


純くんの言葉に、ふと、3年前に飛んでいた意識が引き戻された。


いけない。会話の途中だったのに…。


慌てて笑顔を張り付けて、純くんの方を見上げる。



「たださ、奏はさ…崎山が裕介と付き合ってるんだったら…お前も安心できるんじゃないかって、そう言ってただけだよ。」



その言葉に張り付けていた笑顔がひきつった。



…純くんは、とても素直な人だ。


だけど、その素直さが、純粋さが、時々チクリ、と軽い疼きを伴って私の胸に突き刺さる。


痛み、とは言えないほどの小さな疼き。だけどそんな事を繰り返していたら、疼きはやがて痛みに変わって、大きな傷口になっていく。


出会ってから10年以上経ち、同じ職場になってからも、もう3年経つ。


頭ではもうこの人は私の好きな人ではないのだと、そう割りきっていても、心がどうしようもなく痛んでしまうのだ。


ーー『お前の気持ちに応えることはできない。』


そう最初から言ってくれれば、こんなに心が痛むことは無かったのに。


…違う。私が最初にきちんと好きだと伝えていれば、純くんだって気持ちには応えられなくても、本気で向かい合ってくれただろうに。
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