好きも嫌いも冷静に

・話せば解るⅡ


溜め息か…。出ない訳がない。
会いに行くったって…、こんな心のまま、行く理由もない。
…しばらく会ってないなぁ…。元気にしてるかな。
かと言って、環から連絡が来る事なんてない。
会わなくったって、…心配もされないんだな…。
…俺も‥連絡していない、…同じだ。…そう思われてるのか。…。

俺達の関係が、がっついた男女の関係だけだと思いたくない…。そんなの…すぐ終わりだ。
少なくとも俺は、…そんな気持ちで好きだと言ったんじゃない…。

ああ、くそっ。スッキリしないな…。

聞いてどうなるもんじゃないからなんて…、強がってるのは自分が一番良く解ってる…。


「こんばんは」

「あ、すみません、もう今日はおしまい…環…」

「英雄、元気にしてるの?最近全然来ないから、来ちゃったじゃない」

「…環」

「な〜に?幽霊でも見たような顔ね?足、あるわよ?ほら。
英雄…。ミルクティー…、奢ってくれる?」

「…あ、ああ。すぐだ。…座って待っててくれ」

ドアにCLOSEDのプレートを掛けて、フロアの明かりを落とした。


「…どうぞ」

「有難う。はぁ…、美味しい。ねぇ…、どうして帰ったの?」

「え?」

「あの日…、あの夜よ…。通りに立ってたでしょ?気がつかないとでも思った?そんな大きな体をしてるのよ?自覚、ないの?
…英雄は解ってないわ。
貴方はね、自分で思っている以上に目立つのよ」

「…え?…はぁあ?」

「…自分では気づかれないように消えたつもりでしょうが…。あんなデカイ影…。うちに来る人で、他に誰が居るって言うの?
ねえ、ケーキない?
パウンドケーキも食べたくなっちゃった」
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