好きも嫌いも冷静に

「…解ってたけど。一人は嫌だったの。……一人ぼっちに成るのは…。
だけど、もういいの。自由にしてあげる、別れてあげるね。
ごめんね伊織、…有難う。ごめんね。もう、こんな事しないから…。見掛けても声も掛けない。連絡もしないから。部屋も、絶対行かないから。信じて?
今日はごめんね、それから……今まで有難う」

「いいのか?本当に」

「うん、いいの。もう聞かないで」

「解った。じゃあ、元気でな。…いい男、見つけろよ?冴子なら直ぐだよ」

「うん、伊織も。結婚できるいい人、見つかるといいね。じゃあね…」

カフェラテは飲みきることもなく、冴子は直ぐ席を立った。マスターに軽く頭を下げて出ていった。
上から目線の女王様だった冴子が…。あいつはプライドが高いから、ここ迄の話をするには、結構屈辱的だったんじゃないか…。自分から振った事にして別れないと気がすまなかったんだな、きっと…最初は。
取り敢えず終わった…。
良かった…。ふぅ、だな。

「お綺麗な方ですね」

「え?ああ…、マスター…。そうですね、綺麗は綺麗…綺麗だと思いますよ」

「あら。随分、他人事ですね?」

「別れ話ですよ…だらしない話ですけど、まともなつき合い方じゃなかった相手なので…。俺は、ほぼ便利屋を兼ねた、…セフレ扱いでしたから。
心があったとは思えない。何してたんだろうって、思います。
やっとこれで“無関係"に成れました」

「えー?あら、やだ、そんなお相手とのお話だったの?」

いけない。
興奮したらオネエみたいな言葉遣いになるんだよな、姉貴達の影響で。勘違いされないかしら、大丈夫かしら?

「はい…。まあ、これで結婚に向かえそうです」

「あら、じゃあ、お相手は別に決まった方がいらっしゃるの?だから清算?」

やだ、また。…やばいな。

「清算…か。いえ、相手はまだ居ません。これから探そうと思っています。ただその前に…。清算と言えば清算というのでしょうか…。ずるずるした関係性を解消したかったのは確かです。
俗に言う婚活というやつですか?その為に。
俺はそんな、…マスコミ先導で作ったような言葉、嫌いですから使いませんけど」
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