好きも嫌いも冷静に
そういうのは…

・すみれちゃんは


朝、出掛けに大家さんの部屋のドアノブに袋を掛けた。
ご馳走様でした。
会わない事を想定して、メモを入れておいた。

…珍しいな。
いつも必ず掃き掃除をしてる時間なのに、居ないなんて。
……そういえば、クン…味噌汁の匂いも、今朝はしていないような…。
まあ、俺が立ち入る事では無いしな…。

そう思案していると、大家さんの部屋からカタンと物音がした。
居るには居るみたいだな。


「いらっしゃいませ」

「いらっしゃ〜い、伊織」

「おはようございます。昨夜は夜分に…、何だか、お邪魔しました…」

…言葉に詰まるのも、…変か。

「すみません、モーニング、ブラックでお願いします」

ここはいつも通りにってことだ。

「はい、了解」

…何だか急に距離が近く成った気がするな…。
まあ、人の弱みとか(弱み?)、お互いに見せ合ったようなもんだもんな…。

「お待たせしましたぁ。どうぞ」

「有難う」

ん?何だか視線を感じて、すみれちゃんを見つめ返した。

「あ…あの、伊織さんて、おっしゃるんですね、お名前。私も…、伊織さんて、呼んでもいいですか?」

「え?まあ、構いませんよ」

「本当ですか?
キャー、嬉しい!有難うございます」

教えたってことだ、名前。
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