好きも嫌いも冷静に

・これもお泊りなのか


思わず言ってしまったけど、…ふぅ、これで良かったのか…。
大家さんの俺に対する気持ちは、解り過ぎる程伝わってきていた。
俺の事、好きだと言ってくれた後も平静を装うとしている事も…。
それは関係なくても、怖がっている人を放って置けなかった。だから、元気になって欲しかったんだ…。いい人気取りだな。

現実はもっと違うところにあるんだ。どんなに元気になろうが、暗い夜はやって来るし、一人、部屋に居ないといけない。
今夜ご飯に誘っても、何の解決にも成ってなかった。
俺と一緒に居たいと言ったのだって勇気がいる事。複雑に怖いという事と、…俺と居たいという事。
彼女の中ではどう処理しているのだろう。ただの用心棒か?それとも…、それ以上求めているのか…。
言い訳でもなんでもなく、男として、下心なんて微塵もなかった。誓ってもいい。
部屋に行くと言った事で、期待させてしまったかもしれない…。
俺も大家さんの事が好きだと…、気持ちに応えようと思わせてしまったかも知れない。
中途半端な優しさは、傷つけてしまう事になるだった。はぁ。
良かったのか…。
怖いと言っても、仕方のない事だからと、割り切るように宥めた方が良かったんじゃないのか?
部屋に行ってしまったら、恐さの解決だけじゃない…。
…男だから、…女だから、…そこに大家さんの感情が関わっている…。

何故、適度なところで放って置けない?
何かあったら心配だから?
相手が誰でも心配するのか?
大家さんだからか?
構わなかった事でここで事件にでもなったら、後味が悪いからか?

解らない…。一体…。俺の心はどこにあるんだ。常識的にいいことをしようと、頭で考えた挙げ句のことか。それか。
とにかく約束してしまったんだ。今更やめるなんてことは出来ない。そうすると無駄に動揺させてしまう。行かないといけないな…。
軽くシャワーを浴び髪を乾かした。スウェットに着替え上着を着た。
クローゼットから取り出した寝袋を手に一階に下りた。
< 79 / 159 >

この作品をシェア

pagetop