好きも嫌いも冷静に

・本屋


「お疲れ様でした。お先に失礼します」

デスクを軽く片付けて席を立った。

「お疲れ様」

「おう、お疲れ〜」

「どうだ、今日、飲みは?行かないかぁ?」

「あ、っと、今日は遠慮しときます。すみません」

まだ週の真ん中、普段から飲みたい気持ちもそんなに無いし、断った。決して関係性は悪くない。
今日は寄りたいところがあった。
駅前の24時間複合書店だ。
欲しいビジネス誌と新刊のミステリー小説を買いに行くつもりだ。

欲しかった本はすぐ見つかったから、パラパラと車関係の雑誌を眺めていた。
最近は若者の車の所有率が下がっているというが、他に優先して欲しいモノが溢れているからだろうか。
今の時代は、車が無くても困らないほど交通網は発達しているし。興味が無ければ無駄なモノ、必要無いのかも知れない。
恋人が居たら、ドライブデートとか、しないんだろうか。恋人が居なくても一人気晴らしに走る、なんてこともしたくはならないのだろうか。
俺は普通のサラリーマンで普通のところに住んでいる。収入も普通。無理をしない範囲で車は好きだから所有している。目的の無いドライブが好きだからだ。
彼女が居なくても、俺みたいにドライブ好きだとかなら、迷わず当たり前のように車は購入するのだろうけど。

「すみませ~ん、後ろ、失礼しま〜す」

「あ、はい。どうぞ」

店員がお客さんを案内して来たようだ。
後ろを通過して行く。

「こちらです、どうぞ」

「有難うございました」

「ごゆっくりどうぞ…」



うわっ、あの人だ。
たまに見掛ける長身のイケメンさん。
何、見てるんだろう?…。ここは……カー雑誌か…。
グラビア雑誌とか見てたら、どうしようかと思っちゃった…。
< 8 / 159 >

この作品をシェア

pagetop