恋に落ちるなら君がいい




「楓さん。今日は私友人と食事に行きますので帰りが少し遅くなります」


こういう時に

会社の内線は楽だ。


職場で周りに聞かれてる状態であれば、彼も周囲の目を気にして私に深く質問することがないから。


ガチャリと電話を切ると私は直ぐに帰り支度を済ませ会社を出る。


足取りが軽いのは


これから


慧に会うからだ。



慧と2人で会うのはこれで二度目。


土日は会うのが大変だから平日の夜。に決めたんだ。



会える時間は長くない。


それは…


お互いの事情のため。




会う理由はない。

ただ

会いたい。


それだけ。




タクシーを拾い、急いでアパートに向かうと、部屋の灯りがついているのが外から確認できる。

「慧…早いな。」



「遅れちゃってごめんね?」

カチャリと扉を開けると、玄関向かって真っ正面の台所に立って、ヤカンに火をかける慧がいた。


「お帰り。」

振り向きながら笑う。

「何してたの?」

「カップ麺食いたくてお湯沸かしてた。」


「次期社長様でもカップ麺食べるんだね。」


悪戯に笑う私に「それ、やめてよ」と不貞腐れる。


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