恋に落ちるなら君がいい
「な、なんで?」
動揺してるのがバレないように、できるだけ笑いながら聞いた。
「…愛のない結婚生活は楽しい?
それとも
愛がないから楽しい?」
確実に
確信をついてきてる。
…分かってて聞いてきてるんだ。
「愛はあるよ?だって私は最初から名無しのごんたさんが社長だって知ってて返事をだしたんだもん。」
今朝聞いたばかりの美和ちゃんの言葉をそのままいただいた。
「俺は社長のことまでは知らないけれど。
なに?
社長に言えたの?」
一つのブレのない質問。
野嶋君は本当に分かってて喋っている。
それを頭で理解した途端に
緊張で体が強張る。
「…なに?
何が?
野嶋君が何を言ってるのか…
分からないよ?」
ひた隠しにしていた動揺が
手に持っていたグラスの震えで
目で見て伝わってしまった瞬間
震える手を
野嶋君の手がギュッと力強く握りしめた。